無料小説 ショコラと遠吠え

赤橋(しばらぶ)の小説置場

夢を見る 1

 

 学生時代、事あるたびに「将来の夢」を聞かれてきました。

 でも私には、やりたいことも、なりたいものも、何もありませんでした。

 もしかしたらあったのかもしれませんが、それらは現実味のかけらもない、他愛のない夢に過ぎなかったのです。

 周りの友達も「やりたい仕事なんてない」と言っていたから、きっとみんなそうなんだと思って、なんとなく夢なんて持たないまま生きてきました。

 ただ目の前にあったことだけをしてきたように思います。例えば課題を終わらせることだったり、好きな漫画を読むことだったり、週末の予定を考えることだったり。

 そのまま大人になった今。

 私は、未だに夢を見つけられずにいます。

 

 1Kの小さな部屋にはちょうどいい、20インチのテレビからは笑い声が聞こえてきました。

 今、放映されているのは最近人気のバラエティー番組の再放送のようでした。出演者は、これまた最近人気のアイドルと、俳優や女優、世界大会で活躍したスポーツ選手などなど。

 彼らはとてもキラキラとしていて、まるで輝いているようでした。

 テレビの向こう側の世界は、まるで私たちが過ごしているこの世界とはかけ離れたところにあるように見えます。

「さて、今日の夕ご飯はどうしようかな」

 一人暮らしも2年目に差し掛かり、いつの間にかひとりごとも増えた気がします。

 冷蔵庫の中を見てみるも、あるのは人参と卵のみ。料理するのも面倒なので、卵かけごはんにしようかな、と思いましたが、昨日の夜もそう思って卵かけごはんを食べたことを思い出し、スーパーにでも行って何か買ってくることにしました。

 

 家を出るとあたりはまだ明るく、人通りもありました。

 5月も中旬に差し掛かり、過ごしやすい気候です。アパートの前を、柴犬の散歩をするおばさんが通り過ぎていきました。

 私はアパートの脇にある駐輪場に行き、愛車の鍵を外します。ホームセンターで1万4000円で買ったこの白い自転車が私の愛車です。

 駐輪場に屋根がないせいで雨ざらしになっているこの愛車は買ってからたった2年しか経っていないのにあちらこちらに錆が目立ちます。

 

 心地よい風を切りながら、10分ほどで近所のスーパーに到着しました。

 実家の近所にも同じチェーン店があるので、なんとなく落ち着くこのスーパーが私は結構気に入っています。

 着いたところで、このスーパーには中に本屋が入っていることを思い出しました。せっかく来たので、買い物をする前に少し立ち寄ることにしました。

 

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