無料小説 ショコラと遠吠え

赤橋(しばらぶ)の小説置場

夢を見る 4

 

 旅行当日の朝、私は秋本さんからの連絡で目を覚ましました。

 寝坊でもしてしまったのかとあわてて飛び起き、スマートフォンの画面を確認してみるも、まだ家を出る時間にかなり余裕がありました。

 何事かと思い、私は通話ボタンを押しました。

 

「はい」

「もしもし?ごめん、秋本だけど」

「うん、おはよう、どうしたの?」

「本当に申し訳ないんだけど、今日、ちょっと風邪ひいちゃったみたいで、旅行、行けなくなっちゃって……」

「えっ、大丈夫? 旅行、キャンセルする?」

「いや、当日のキャンセルだとキャンセル料全額分かかっちゃうから、申し訳ないんだけど、二人で行ってきて」

 

 「まじかぁ……」と私は頭を抱えました。

 彼女と二人ならまだしも、これでは家田君と二人旅行になってしまいます。

 

「家田君にはもう言ってあるから。ほんとごめんドタキャンになっちゃって。しかも言いだしっぺなのに……」

「いや、風邪ひいちゃったのは仕方ないよ。私はまた今度でもいいよ?」

 

 なんとか食い下がってみようとするも、「いや、ほんとに申し訳なさすぎるから、行ってきて!」と聞かないので、風邪の人にこれ以上気を遣わせるのもはばかられ、「わかった、じゃあ行ってくる」と突然の二人旅行に同意することになりました。

 

 同期とはいえ、男女が一泊二日で旅行するというのは、普通なら避けるのではないでしょうか?

 まぁ、家田君に限って変なことにはならないとは思いましたが、大丈夫だとは思いつつ、男女というただそれだけの事なのに、なんだか胸がざわついて仕方ありませんでした。

 彼と二人でカップルさながらに海岸を歩いている姿を想像すると、私は再び頭を抱えずにはいられませんでした。

 こんなことを考えているのはきっと私だけなのでしょう。 

 彼はきっと、秋本さんがいようと、いなかろうと、同じように振る舞うのだと思うと、だんだん自分が嫌になってきました。

 

 そうは言っても行くことになってしまった以上、行かなくてはいけません。

 私はできるだけ自分を平常心になるように落ち着かせ、身支度をして家を出ました。

 

 

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